スペース

私の大好きな作家 加納朋子 との出逢いの作品。私が花巻へ行ってみたいと思い始めたのはユーミンの♪緑の街に舞い降りて♪とこの小説がきっかけだった。旅行から帰ってきてあらためて読んでみると、以前読んだときにはただの文字だった地名や建物が生き生き浮んで来る。
一人の女の子が大学へ通う下宿生活を手紙を中心にたどっていく『スペース』とその中にも出てくる花巻への研修旅行を中心に別の視点で描かれた『バックスペース』。加納朋子の小説は推理小説が多いが殺人事件を扱ったものではない。スペースの中の主人公のことばにも「この中にも謎はあったでしょう?!」とあるように、日々の何気ない生活の中にひそむ謎を解き明かしていく。この『スペース』も、他の作品同様ほわっとした後味の良い作品だ。私のように『スペース』が加納朋子を好きになるきっかけになると嬉しい。

スペース (創元推理文庫)

スペース (創元推理文庫)