緑の黒髪

レザック71 鼠

レザック71 1971−1992年 特種製紙
中学・高校の英語の先生は大変情熱のある方で、6年間自家製の教科書だった。私は英語があんまり好きではなかったので捨ててしまった。(っていうより普通は捨てる)教科書の大きさはA/4だったようにも思うがそんなに大きいはずは無い、たぶんB/5サイズ、厚さは1cm以上あったように思う。中身はタイプライターで打ち込んだ物を印刷してあった。恐らく先生自身がタイプライターで原稿を作ったのだろう、今思うと大変な労力だと頭が下がる。
その教科書の表紙がレザック71だった。もちろんその頃は紙の名前など知らないが、就職して見本帳を見たとき「うわっ!!英語の教科書!!」と思った。中学の時に見た紙を10年近く経っても覚えているということはよほど印象的だったのだろう、一緒に先生の顔を思い出した。ついでに授業中に柄の溝の部分をシャーペンで塗りつぶしていたことも思い出した。
さて、この紙を見て何の柄に見えるだろうか?私は当時「指紋」を拡大したものか?と思っていた。古い資料を引っ張り出してくると「渦潮の波形模様」と書いてある。メーカーの人に聞いてみると「黒髪が波打つイメージ」との回答だった。指紋だと思ってみるとちょっと気持ち悪い。渦潮だと思うと躍動感がある。黒髪だと思うとしっとりとした色気を感じる。一つの紙を見ながら頭の中でイメージを変えていくだけで紙自体の印象が変わっていく。あらためて紙はおもしろいと思った。